遊んでいるウチに、だいぶ深いところまで来ていることに気付いた。

あたしの場合、頭がギリギリ出るか出ないかぐらいの深さ。

「浅いトコ行く?そろそろみんな来ると思うし」

「そーだね」

 あたしは浮き輪をつけてなかったから、歩いて戻ろうとしたときだった。

「痛っ!」

 足に…足に何か刺さってる?!

「香恋?!」

 痛い。足がついたら余計痛いことに気付いた。

…って、ちょっと待って!!足つけなかったら……あたし溺れちゃうんですけど!!

 しかも、こんなトキにかぎって足つってるんですけど!!

ヤバイよ、このままじゃ本気で死んじゃう…

 てゆーかもう、あたし溺れちゃってる…

「香恋!香恋!!」

 友達の声がだんだん聞き取りにくくなってきた……

 

 どーせ死んじゃうんだったら、三谷にもうちょっと優しくしておけば良かったかな。

最後ぐらい、喧嘩なんかしなかったらよかったな。

 お姉ちゃんに会いたい。優大にも…お義母さんにも、お義父さんにも、お義兄さんにも、会いたい…

 あぁ、三谷に言っておかなきゃ。 お土産、ちゃんと持って帰ってよって。

あと、毎日自転車乗せてくれたこととか、大野君に気持ち伝えろって、励ましてくれたこととか、ちゃんと、お礼…言ってない。

 素直にありがとうって、言えばよかった――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「高杉!!おい、起きろバカ!!」

 …え?三谷………?

 あれ…?あたし、死んでない?溺れてたのに…

「ってかここ何処?!」

 あたしは飛び起きた。

「香恋ーっ」 

 美菜子が泣きながら抱きついてくる。

「ちょっ…美菜子?」

「よかった、よかったぁ」

 そのまま泣き続ける美菜子。

「どーしたの…?」

 あたしはベッドに寝かされていた。 

何でこうなったのか分からないあたしに、友達が説明し始めた。

「香恋が溺れて、あたしらが叫んでたら、三谷が飛び込んで来てね〜」

「よっ、余計なこと言ってんじゃねーよ」

 顔を真っ赤にして言う三谷。

「やーだなぁもーっ♪あんなに必死になって助けてたくせにー」

 更に顔を赤くする三谷。 …バカだなー。

「…三谷、助けてくれたの…?」

「悪いのかよ」

「や、そうじゃなくて、えーと…………あ、ありがとう」

 三谷が驚いた顔をした。

…そこまで驚かなくてもいいんじゃない?むかつくんですけど。 たまには素直にあやまったりするよ、あたしだって。

「お前が死んだりしたら、俺どうしたらいいかわかんねーじゃん」

「えっ…」

 ちょっと、その顔反則!!!

そんなかっこいい顔(性格はむかつくけど)の三谷にそんなコト言われたら…

「お母に俺が殺されるだろ。何で助けてやらなかったんだーって。ま、俺はお前がいなくなったら清々するけどな」

「………………バカアホボケカス死ね三谷――――っ!!!!!」

 やっぱり三谷はいつもの嫌味な三谷だった。

くそーっ。あたしめずらしく素直にお礼言ったのにーっ!

  

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