「とにかく、早く帰るぞ」
「…うん」
でも、ここで喧嘩もせずに帰るあたしと三谷じゃなかった。
「………」
三谷の顔から血の気が引いていく。
「…何よ。どーしたの?早く帰らないとお義母さん心配してるんでしょー?」
あたしは部屋を出ようとしていた。
「おい高杉!!」
なのに、三谷は大声で言った。
「何?!」
そんな大きい声じゃなくても聞こえるし!!
てか野田!こっち見てんじゃねーよっ!!キモチワルイから!!
「お前同じ学校の奴はいねーって言ったよな」
「言ってない」
「は?!」
「言ってないじゃんそんなこと」
「ふざけんなテメー」
「何が! あたしそんなこと一言も言ってないじゃん」
「お前他の学校の人が何とかかんとかって言ってたじゃねーか!!」
「…それ、男の子の話なんですけど」
「お前1回死ね」
「…安心して。あたし、死ぬ前に三谷を殺すから」
「お前ほんっとむかつくんですけど!!同じ学校の奴がいるんならいるって言えよ!!」
「何で?そんなの三谷に関係ないじゃん」
「俺さっき『汚ねー手で人の女触ってんじゃねーよ』とか心にもないこと言っただろ!!同じ学校の奴に聞かれてるんだぞ、お前!!どんな噂流されるか…」
「大丈夫。 もう噂流れてるから手遅れだよ」
「頑張って俺違うって言ってたから最近聞かれなくなったのに、また明日学校行ったら質問攻めじゃねーか!!」
「そんなの何であたしに言うのよ!!あんたが悪いんでしょーがっ!!」
「俺だって好きであんなこと言ったわけじゃないんだぞ?!」
「でも言ったのは三谷でしょ!!あたしが言うように頼んだわけでもないし!!」
「つーかそもそも原因はお前が早く帰ってこないから…!!」
「えー?自分が悪いのにあたしのせいにするのー?」
「うっせーなぁ」
「言っとくけどあたしあんたの女なんかじゃないから」
「俺だってお前なんか断固拒否」
「じゃぁ何であんなこと言うかなぁ!!」
「お前の顔に『助けて』って書いてあったんだよ」
「……は?」
「『何かムカツク。とりあえず3回ぐらい殺したい。てか帰りたい』」
「み…三谷?」
「あぁ、あと『お前みたいな軽そうな男と付き合うわけねーだろバーカ。つーか顔近いんですけど!!……キモチワルイキモチワルイ(以下省略) 誰か助けて』 って、顔に書いてあった」
「なっ……」
何で分かるの?!
「香恋ちゃん、それホントなの!?」
野田が割り込んでくる。
「「お前に関係ねーだろ 1回死ねコノヤロウ!!」」
三谷とハモっちゃったけど、それはまぁ仕方ないとして…
「あたしそんなに顔に出てた?!」
「それに気付いてないあの男が不思議なんですけど。カナリの自意識過剰だな」
「あたし頑張って抑えてたのに…」
「お前バカ正直だから思ってること全部顔に出るんだよ」
「嘘だ!!」
「でも、俺が言ってたこと合ってただろ?」
「クソー 何でこんな奴にあてられたんだぁーっ エスパーかコイツー つーかいっそ死ねぇー死んでくれぇー」
「…最後おかしいぞお前」
「とっ…とりあえず帰ろ!! 舞香、ゴメンね?あたし先帰る」
「うん♪」
何故か舞香はご機嫌だった。
「言っとくけどお前帰り俺と3メートル間をあけて歩けよ」
「言われなくても5メートル後ろを歩くわよ!!」
そんなこんなで、最悪な合コン、最悪な1日は幕を閉じた。
次の日学校であたしも三谷も質問攻めにあったのは言うまでもない。