「なんっっじゃこりゃぁぁっ!!!!!」

 次の日の昼休み。

教室に、弁当箱をあけた三谷の叫び声が響いた。

もちろん、同じ教室でご飯を食べていたあたしにも聞こえてる。

「高杉ーっ!!!」

「何よ!また文句?!」

「文句以外何があんだよ!!」

「今日のお弁当は完璧だと思ったんだけどなー」

「何処がだ!!おかずonlyの弁当は嫌だって言っただろーがぁぁ!!! しかも何だよこの量!復讐のように多いぞ!!」

「ちゃんと主食になるもん入ってるじゃん!! てかおかず増やせって言ったの三谷だし!」

「だからっておかずだけでこの量はないだろぉ!!つーか何処に主食が入ってるんだよ!!」

 三谷がさしだしたお弁当を見るあたし。

たしかに、おにぎりを一つ作ったハズ。 さすがにおかずonlyのお弁当は食べれないだろうなーと思って。

なのに………

「あれ?」

「あれ? じゃねー!!!」

 あたしおにぎり作ったハズ…

「三谷おにぎり持ってくるの忘れてる!! 自業自得よ!」

「俺のせいにするな!! お前が入れ忘れたんだろーが!」

「とにかく、そんなにあたしのお弁当が気に入らないんならコンビニでお弁当買えばいいじゃん」

「お前、俺にそんな金があると思ってんのか」

「あ、そういやお義母さんが退院するまでお小遣いなしだっけ」

「だから我慢してお前の弁当食ってるんだよ」

「そーだったねー 三谷はバイトする時間もないからねー お金ないんだったねー」

「………」

「よし、そんなにご飯が食べたいんなら、明日からご飯onlyのお弁当に」

「するなボケェ!!」

 

 

「あーぁ。何が気に入らないんだろう。お義父さんもお義兄さんもおいしいって言ってくれるのに」

 部活の休憩時間に美菜子に相談……というより愚痴をこぼすあたし。

だって、2日連続で文句言われるんだもん!!あたし朝から頑張って作ったのに!!

「そんなのあたしに言われたって分かんないよ」

「…うーん」

「てゆーか何だかんだ言って、香恋三谷のためにお弁当作ってあげてるんでしょ?」

「いや、別に三谷のためとかじゃないけど」

「でもさ、普通に考えて、三谷野球部じゃん」

「?」

「いっぱい食べなきゃ」

「…だから、今日は大量のおかずを…」

「主食がなかったら食べられないと思うけど」

「…うん」

 ごもっともです…。

「さて、そろそろ練習始まるかな?」

 美菜子が立ちあがった。

「そんな悩んでないでさ、三谷に直接言えばいいんじゃないの?」

「………うーん、そぉ……だね」

 

 

「てなわけで、どんなお弁当なら文句ないの?」

「…だから、普通の弁当にして欲しいだけ」

 自転車を漕ぎながら、三谷は呆れたように言った。

「昨日の弁当は普通だったじゃん」

「おー、今日のおかずonlyの弁当は普通じゃないって自覚はあるんだな」

「うるさい」

 あたしはとりあえず三谷の後頭部を殴っておいた。

「った……」

「ちょっ…三谷ー!!前見て前!!電信柱にぶつかるー!!」

「原因はお前だろーがぁぁ!!」

 なんとか電信柱にぶつからずに済んだけど、すごい危なかった。

うん、自転車に乗ってるときは三谷に衝撃を与えちゃだめ。

「お前頭大丈夫か」

「うん」

「……全然大丈夫じゃねーな」

「だまれ」

 普通の弁当………か。

てか、三谷の思う普通の弁当ってどんなお弁当なの?!

  

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