「俺、ずっと前から高杉のこと好きだった。付き合ってくれないか?」

 

 あぁ、告白だったんだ。

…ていうか誰だよ。 告白する前にまず名乗れ。

 

 放課後。

あたしは部活に行く前にとりあえず体育館裏に行ってみた。

そしたら、イキナリ告白された。

何で?!おかしいよ。絶対おかしい。何でこうなるの!?

 

「えーっと、うーん、何て言うかな、ゴメン」

「……三谷と、付き合ってるってホントなのか?」

「いや、ソレは断じて違う」

「じゃぁ…」

「あぁ、あたしね、今の生活に満足してるっていうか… あたしは三谷の隣にいるのが当たり前で、まわりには家族も、友達もいる。だから彼氏が欲しいとか、思わないの」

 あ、三谷は嫌いだけどね?

「だから、ごめんなさい」

 あたしはとりあえず頭を下げておいた。

「でも、俺………」 

「あ。 その前に、あんた、誰?」

 

……この一言がダメだったのかな。

 

「俺は野球部1年ピッチャーの佐伯 雅也(さえき まさや)」

「…ふーん」

「覚えとけよ。絶対復讐してやる」

「は?」

 何を言い出すのかと思ったら……復讐? 何で?告白されたの断わっただけで、復讐?

 ……ま、気にしないでおこう。

 

 

「お前、誰に呼ばれてたんだよ」

「ん? あぁ、佐伯………だったと思う」

「佐伯? …野球部の、佐伯 雅也?」

「あ、うん、そうそう。確かそんな名前」

「…お前、気をつけろよ」

 三谷がボールを片付けながら言った。

「…どういう事?何に気をつけろ?…え〜?」

「とにかく、気をつけろって言ってんだよ」

「う、うん、分かった」

 何か三谷の言い方がいつもと違う感じがしたから、おとなしく頷いておいた。 

 

次の日。

「高杉―――!!!」

「何よー!!また文句?!いい加減黙って食べてよ!!」

「今日は文句以前の問題だ!!」

「は?」

「俺の弁当がねぇ!!!!」

「……へ〜」

 あたしはそのまま弁当箱をあけようとした。

「待てよお前!!俺の弁当がないって言ってんだよ!!」

「そんなの忘れた三谷が悪いんでしょ?!」

「俺絶対入れた」

「あたしだって朝ちゃんと三谷に渡したけど」

「……」

「……」

「ドンマイ♪」

「♪とかつけてるんじゃねーよ!俺は本気で困ってるっつーのに」

「…はいはい、じゃぁパンでも買ってきなよ。100円あげるからさ」

「マジでか?!」

「うん」

「でも100円じゃ足りねーんだけど」

「ふーん。じゃぁみんながおいしそうにお弁当食べてるの眺めてれば」

「あ゙――――、悪かった、俺が悪かった!!文句言わずに100円でパン買ってきます!!」

 このとき、あたしも三谷も気付いてなかった。

三谷がお弁当を忘れてきたんじゃなくて、盗られたんだ、ってこと。

 でも…

「ありがとな、高杉。 今度、ケーキかなんか奢ってやるよ!」

「ううん、そんなことしなくていいよ?」

「え。お前、ホントに言ってんのか?」

「うん。10倍返しにしてくれたらそれでいい」

「何でこういうときに限ってお前お金に執着してるんだよ!!」

 今は何も知らずに、ただ楽しい時を過ごしてる。 三谷の隣で。

  

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