「え………? 堀越、な…何言ってるの?冗談でしょ?」

「…冗談なんかじゃないよ」

「だって…!三谷は、野球部の期待の星なんでしょ?!なのに、何で?!」

「分からないよ、俺にも」

「何で、何でレギュラー ………なれなかったのよ」

 

 

 あんなに、毎日練習してたくせに。

期待の星なんでしょ。 何でレギュラーにもなれないのよ!!

どうして、三谷じゃなくて、佐伯がレギュラーなのよ……

 

 

「兄さんは、レギュラー候補に三谷を挙げたらしいんだ」

「…だけど、佐伯がレギュラーじゃん」

「……俺の推測なんだけど…」

「え?」

「佐伯が、監督に頼んだんじゃないのかって、思うんだ」

「何で?そこまでしてレギュラーになりたかったの?」

「いいや、復讐だよ 高杉さん、佐伯に『復讐してやる』って宣言されたんでしょ?」

「そうだけど…?」

「だから、康輔に復讐してるんだよ」

「…おかしくない?何で三谷なの?」

「高杉さんが佐伯に告白された次の日から、康輔の弁当がなくなったりしてるでしょ?」

「うん。あれだけ毎日ないんだから、忘れてるわけでもないと思う…」

「お弁当箱、部活が終わって帰ろうとしたら、康輔のカバンに入ってるんだ」

「…え?」

「多分、佐伯の仕業だと思う」

「……どういう事?意味分からないんだけど…」

「佐伯は、高杉さんのこと好きだから、復讐するったって高杉さん本人にはできないと思うんだ」

「だからって、三谷に?」

「高杉さんが告白断わったの、康輔がいるからだとでも思ってるんじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「佐伯―――っ!!!!!!」

 あたしは佐伯のクラスに入ると、大声で叫んだ。

「高杉さん!やめなよ!!」

「放して堀越!!!」

「ダメだってば!!もうレギュラーは決まっちゃったんだから!」

「納得いかない!!あたしのせいで三谷がレギュラーになれなかったなんて、納得できない!!!」

「あれ、高杉? 俺に用?」

 笑顔で話しかけてきた佐伯に、あたしは収まりきらない怒りのこもったビンタを食らわせた。

 

「た、高杉さん!!!」

「堀越は黙っててよ!!」

 あたしの腕を掴んでいた堀越の手の力が緩んだ。

「教室にまで乗り込んできてまで何だよ」

「あんたこそ、ふられたくらいで復讐って何よ」

 あたしは思いっきり佐伯を睨んだ。

「どうして、三谷に嫌がらせするのよ。 三谷のお弁当がなくなったり、ノートとかがなくなったりしてたのも、全部あんたの仕業だったの!?」

「悪いのは高杉だろ?」

 

パシンッ

「最低」

 

 あたしは、もう一度佐伯にビンタした。 

 

「別にあたし三谷と付き合ってるなんて言ってないじゃん!!なのに、何で三谷に嫌がらせなんかするのよ!!」

「じゃぁ何でいつもアイツと一緒なんだよ!!」

「そんなのあたしの勝手でしょ!!あたしが三谷と一緒にいたいと思うから一緒にいるだけ!!それの何が悪いの?!」

「付き合ってないとか言っときながら、アイツの隣にいるのが当たり前だとか言ってただろうが!!!」

「そーだよ? あたしは、三谷の隣にいるのが当たり前だよ?何か文句でもあるの?」

「…っ」

「どうして、三谷がレギュラーになれないの? あんたに、三谷以上の球が投げられるの?」

「高杉…っ」

「あたしのせいで三谷がレギュラーになれなかったなんて、納得できない」

「じゃぁ、俺と付き合えよ」

「は?」

「そもそも、お前が俺の告白断わったのが原因なんだぞ?」

「………」

 コイツ、ほんと最低。

「あたしが、あんたと付き合ったら、三谷には、何もしない? 三谷を、レギュラーにしてくれる?」

「付き合ってくれるんならな」

「…じゃぁ「高杉!!!」

 え…? 何で…

「三谷…っ」

「お前何やってるんだよ!!」

「何って…」

「俺がレギュラー落ちしたのは、お前が悪いんじゃない」

「でもっ」

「俺の力は、まだ監督に認められてないんだ」

「そんなことないじゃん!!あんたは期待の星なんでしょ?!」

「そう思うことにした。だから、お前が佐伯と付き合う必要なんかない」

「でも、三谷……」

「別に気にするな」

 ごめん、三谷。 あたしのせいで……

「お前が俺のこと心配してるとか、キモイ」

「………」

 あぁ、一瞬でもコイツに謝ろうとしたあたしがバカだったんだ。

「誰が三谷の心配なんかするかコノヤローっ!!そんな暇があったら他のことに使うわボケー!!!」

 

 あたしと三谷の喧嘩の後、何故か佐伯に謝られた。

そして、無事、三谷と堀越はレギュラーになれたんだとか。 一件落着、らしい。

 

「てゆーかお前いい加減普通の弁当作れよな」

「うるさい。いっつも普通のおいしいお弁当作ってるんですけど」

「どこが」

「……そーか、じゃぁ三谷はお昼の時間何も食べずにボーッとしてなよ」

「なんでそーなるんだよ!!(泣)」

  

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