「ったく、お前はホントに…」

 その日。

ん?……いや、ある日?

いやいやとある日。 いやいやいやある月曜日。 

いやいやい……や、まぁ、そんなことはどうでも良い。

今、あたしは三谷から呆れた視線を送られている。

「何でこういう日にも寝坊するかなお前は」

「別に、寝坊じゃないもん!!」

 頑張って反論。

そう、今日はとうとうきてしまったテストの日。

最悪。ほんっと最悪。

結局あのあとろくに勉強してないし……。

「いつもより起きるのが30分も遅れて、今こうしてパンを頬張ってるのが、寝坊じゃないってのか」

「…うるさい」

 そりゃ確かに寝坊だけど!!

でも認めたくないもん!!三谷のバカー 死ねー 消えちゃえーっ

「お前のせいで俺がどんだけ苦労してるのか分かってんのか?」

「いいじゃん!!もっと速く!もっと速くこげ!! 進め――っ!!」

「…お前誰だよ」

「あたしはね?レギュラーになった三谷の足腰を鍛えてあげようとして、」

「あーハイハイ。分かったから早くパン食えよ」

「………」

 ムカツクーっ

寝坊したあたしが悪いのかもしれないけど、でも悪いのは三谷だ!!

そう、すべて三谷が悪い!!

「心の声は心の中にしまっとけバカ」

「…へ?」

「全部聞こえてるんですけど。声に出てたぞ」

「マジで!?」

「なーにが『すべて三谷が悪い』だバカ。そんなこと言ってんなら今すぐおりろ。走って学校行け走って」

「す、スミマセンデシタ…」

 あぁ、あたしバカだ。

全部声に出てたなんて…… まさか、これも出てないよね?

 あたしは恐る恐る三谷の表情をうかがってみる。

…うん、大丈夫っぽい。

「ところで、歴史はどーお?覚えられた?」

「…んー。ぼちぼち」

「微妙な答え方ーっ。 よし、あたしが問題出してあげよう!!」

「いやいい。 遠慮しとく」

「遠慮なんかしないで良いからさーっ♪ 1192(いい国)作ろう?」

「…………………」

 あれ。何で黙るの?

答えないつもり?それとも本気で分かんないの?

いや、【1192(いい国)作ろう鎌倉幕府】は一般的でしょ。ポピュラーでしょ。分かんないの?!

「……みーたーにー?」

「…何幕府だっけ…」

「アホかぁっ!鎌倉幕府じゃボケーっ!!1192(いい国)つくろう鎌倉幕府知らなくてどうする!!生きてけないよ三谷!!」

「ンなもん知るかっ!!」

「小学生でも知ってるんですけど!普通知ってる!! お前は小学生以下か!! ……いや、小学生以下だっ!!」

「…お前マジでおりたい?」

「……いや、おりたくないです。スミマセンデシタ。ついカッとなっちゃいました」

 でも【1192(いい国)作ろう鎌倉幕府】知らなかった三谷が問題だと思うんだけど……

そんなこと言ったら自転車からおろされるから黙っとこう。

「ところでお前、数学大丈夫なワケ?」

「え? あぁ、比例と反比例なら分かるよ」

「……それ、中1の内容だと思うんですけど」

「………………」

「………………」

「アハハハハ。気にするな三谷。お前も1192(いい国)作ろう鎌倉幕府知らなかったじゃん。アハハハハ。気にするな」

「……笑ってていい事じゃない気がするのは俺だけですか」

 

 

 

 

 

「何―――――?!」

「そんな大声出して、どうしたの?」

「香恋、今なんて言った? え?もっかい言って?」

「? だから、今日は1時間目が現国で、2時間目が物理。3時間目は地理だよ?」

「なっ………な、な…ないじゃん!歴史も数学もないじゃん!!!」

「何―――――?!」

 向こうの方から、三谷のヒステリックな叫び声が聞こえた。

  

inserted by FC2 system