「お義母さんっ!!」
今日は、待ちに待ったお義母さんが退院する日!
すごく楽しみにしてたんですよ、お義母さん。
お義母さんが帰ってきて、元の楽しい生活に戻れる。
そう、三谷に文句を言われる生活からもサヨナラできる!!
「香恋ちゃん、文化祭で劇やるの?」
「はい」
「どんな役?」
「………それは…」
言いにくいです。
非常に言いにくいです。てか言いたくないです。
三谷の奥さん役なんて、絶対言えな…
「香恋、康輔君と夫婦役やるんです。すごくピッタリの役だって、友達にも言われてるみたいで」
お姉ちゃんんんんんん!!!!!
何で言うの!何で!!
「あらそお〜 康輔と夫婦役?楽しみねぇ」
「家でいっつも練習してて…」
もぉやめてよ、お姉ちゃん。
その後、家に帰るまでずーっとあたしと三谷が劇で夫婦役をすることが話題だった。
三谷は諦めてたのか、何も言わずにケータイをいじってた。
ケッ。 三谷なんかと夫婦役なんて! こんな奴と夫婦役なんて!!!
「王子……? あなたが?!」
「隣国との戦争中に怪我をしてしまい、そのまま気を失ってここまで川に流されて来たんだろう」
「は、はあ…」
「お前のお陰で怪我も治った。ありがとう」
「い、いえ、そんな…」
美菜子ぉぉぉっっ!!!
なんでそんなに演技上手いの?! …あぁ、相手が矢幡だからですか。
「上手いねー」
「ん、そうだな」
隣にいる三谷に話しかけると、三谷からは短い返事が返ってきた。
ちなみに、あたしと三谷もちょっと前までやってたんだよ?
今日は1回通して練習してみようってことで、今は、フェリックスがエリーに王子だってことを言って、お城に帰るところ。
「お気をつけて…」
「あぁ」
エリーはフェリックスにもらったハンカチを大事をそうに持っていた。
「てか何でハンカチ?」
「いや、俺に言うなよ。笹倉に言え、笹倉に」
「うーん」
それから練習は順調にすすんで、無事に終了。
「やっぱ問題は三谷と香恋よね」
宮根さんが言うと、クラス全員が頷いた。
って、
「何で?」
おかしいだろ。
何であたしと三谷が問題なワケ? 頑張ってるじゃん。頑張って夫婦役やってるじゃん。
「何て言うか、夫婦って感じしないんだよね〜」
「夫婦じゃないもん」
普通に考えてみてよ。
大っ嫌いな奴と夫婦役やってるんだよ? 夫婦って感じがするわけない。
「喧嘩するシーンはいいんだけど…」
「もうちょっと、何て言うかなー」
「矢幡と香宮みたいにさ、」
「「無理」」
あたしと三谷は速答した。
「とりあえず、もうちょっと夫婦っぽくできない?」
みんなからのお願いもあって、あたしと三谷の練習時間は増えた。
「お前いい加減棒読みやめろよ!何で喧嘩の時はできるのに他の時はできねーんだよ!!」
「あなたー なんて言えるかボケェ!!」
「言えよ!」
「無理!!」
「言え!」
「そんなこと言ってる三谷はどーなのよ!三谷だって喧嘩のシーン以外はダメじゃん。全然ダメじゃん。もっと感情込めなきゃ」
「お前に言われたくねーよ」
そんなこんなで、文化祭まであともう少し。
さて、劇は成功するんでしょーか!
「だーかーらー、そこはもっと笑顔で言えよ」
「無理」
「何で不機嫌そうな顔して「行ってらっしゃい」って言うんだよ。「二度と帰ってくんな」って言ってるようにしか思えねーんだけど」
「二度と帰ってくんな」
「死ね」
劇、成功しなさそう…