「プレイボール!」
審判の声で試合開始。
あたしはあんまり野球に詳しくないけど(特にルールなんて全く分かんない)、一生懸命やってるのをみるのは好きだ。
一生懸命やってるのは、野球だろうとバレーだろうとみてて格好いい。
…でも、全くルールが分かってないのもまずいかもしれないな…。
「…あれ?香恋ちゃん?」
「…え?」
あたしは名前を呼ばれてふり返った。
「やっぱり。久しぶりだね」
「………えっと…はい」
…この人誰だっけ。
えーっと、どっかで見たことあったような無かったような……
「覚えてない?」
「はい、全く」
「相変わらず香恋ちゃんはずけずけ言うね」
「そうですか」
「俺、野田 竜太。覚えてない?」
「はい、全く」
「ひどいなー」
とかいいながらも、野田とかいう人は笑ってた。
「合コンで俺がメアド教えてって言っても教えてくれなかった子だからハッキリ覚えてるんだけどな、俺は」
ごめんよ。全く覚えてないんだな、あたしは。
ん…?合コン………?
「あぁ、あのときの自意識過剰オトコ!!」
やっと思い出した!!!
「?!」
あ。
「ご、ごめん。つい大声で…」
「い、いや、いいんだよ、そんな印象しか残ってなかったんだね」
「ほんと、ごめんなさい」
「それより、あの時香恋ちゃん迎えに来てた人、三谷康輔だったんだね」
「え?」
「俺も、野球部なんだ」
初耳です。
「まさか香恋ちゃんが三谷康輔の彼女だったとはね〜」
「彼女じゃないです。あんな奴と付き合ってなんかないです」
「あれ?じゃぁその子は香恋ちゃんと三谷康輔の子供じゃないんだ」
野田とかいう人は優大を指しながら言った。
「…殺されたいですか?あたしも三谷もまだ高校生ですけど?」
「じょ、冗談だよ、冗談。アハ、アハハハ」
野田とかいう人は笑いながら去っていった。
「何だったんだろ」
…ってか、野球部って言ってなかったっけ。
じゃぁ、あの人の学校も試合に出てるのかな。
………ま、関係ないか。
「ほら、優大。おじちゃん出てきたよ」
ウチの学校の攻撃が終わって(まだ1点もとってない)、三谷がグローブを持って出てきた。
「よし、応援しよっか優大!」
優大はすごい笑顔になって、手をバタバタさせた。
三谷の球は、いつも以下だった。
…どうしたんだろう。 最高の球は? 何で、あんなに打たれてるの?
「めずらしいね。康輔が緊張するなんて」
「お義兄さん!」
「優大〜」
優大はお兄さんに抱かれた(というか優大がお兄さんに抱きついた)。
「三谷、緊張してるんですか?」
「うーん、多分ね。中学の最初の試合も、あんな感じだったよ、康輔」
「ば、バカじゃないの?!緊張?」
「高校で最初の試合なんでしょ?」
「…はい、そうみたいです」
「1年生なのに、頑張ってるね、康輔」
「…まぁ、そうかもしれないです…ね」
「頑張って応援してやるんだぞ、優大」
優大に言ったら、お義兄さんは優大をあたしに抱かせると、
「じゃぁ、あとよろしくね」
って言って帰った。というか仕事に戻らなきゃだめなんだよね。
「緊張…か」
とは言っても、三谷は結構打たれてたけど、守備(?)の人が上手くて、1回に点はとられなかった。
だけど、三谷はやっぱり緊張してるみたいだった。
三谷の番が回ってきたけど、三振して戻った。
どうしたんだろう。
最高の球、見せてくれるんじゃなかったの?ねぇ、三谷―――――