「行ってきまーす」

 

 あたしは仕方なく歩いていくことにした。

ってかソレしか方法ないし。三谷のバカの所為で。でも、ゆっくり準備できたけどね。

 とりあえず、着いたらすぐ三谷に会いに行こう。

文句言うために。←ここ重要。(笑)

 

 

 

「…?」

 学校に行く途中、道路の端に何かが落ちてるのに気づいて、あたしは拾った。

何となく……見覚えのある物だったから。

「…やっぱり」

 これ、三谷のだ。

三谷の自転車の鍵についてるキーホルダー。うん、間違いない(気がする)。

…何で落ちてるんだろう。

ここ通ったときに、外れちゃったのかな。

…キーホルダーってそんな簡単に外れちゃうものだっけ。

三谷、こけたのかな。 …ま、どうでもいいけど(こけてくれてたらおもしろいんだけど)。

とりあえず、お弁当と一緒に渡すか。

 

 

「あれ?」

「あぁ、高杉さん、おはよう」

「あ、おはよ」

 あたしは練習道具を片付けている堀越に言った。

「練習終わるの?」

「うん。って言うか、今日は練習してないんだ」

「…何で?」

「康輔が来れないって言うから」

「…は?」

「…あれ?高杉さん、康輔と来たんじゃないの?」

「うん、一人で歩いてきた」

「…そっか、じゃぁ寝坊じゃ無いんだね」

「どーゆーこと?あたしよく分かんないんだけど…」

「さっき、康輔からメールが来たんだよ。『色々あって今日は朝練いけない』って」

「色々?」

「メールで説明するのは面倒くさいから後で話すって」

「………何ソレ」

「さぁ。僕にもよく分からないけど」

「あたしのことほって行ったくせに、練習までしてないとは……」

「まぁ、何か理由があったんでしょ。また後で聞こうよ。学校まで休むとは言ってないし」

「うん…」

 

 

 おかしい。三谷が来ない。

これはおかしいぞ。あのバカの取り柄は『無遅刻無欠席』だけのハズだ。

なのに………遅刻。

もう2時間目も終わっちゃうのに……

何処で何やってんのよ、アイツ。…ってか何で心配してんのよ、あたし。

「起立 ―――礼」

 2時間目も終わり。

ホントにおかしい。色々って何よ、色々って。ちゃんと説明してくれなきゃ困るじゃん、三谷のバカ。

「香恋、三谷休みじゃないの?」

「…うん、朝あたしより先に出てっちゃって、あたし知らないの。朝練行くって言ってたんだけど……」

「電話してみたら?」

「電話?!な、なんで!!」

「だって、心配なんでしょ?三谷のこと」

「………」

 心配してないって言ったら……嘘。

「ほら、はやくしなよ」

「う…うん」

 美菜子に言われて、しぶしぶあたしは携帯を取り出して三谷に電話した。

 しばらく、呼び出し音が鳴り続けた。

…携帯にもでれないの?

 とか思って、イライラしてたときだった。

呼び出し音が切れた!!

「三谷!?あんた今どこにいるのよ!心配したで「只今電話に出ることができません。ピーッという音の後に………

「留守電か―――――っ!!!!!!!!!」

 ありえない!!!

ホントに何やってんのよあのバカは!!

「香恋」

「何ぃ?」

「三谷……」

 美菜子は校門のほうを指さした。

あたしは窓のほうへ行って、美菜子の指さす方を見た。

窓を開けて大声で文句言ってやるんだから!!

 

 

 

 …って、……………え?

 

 

「な……何で、三谷が綾奈(あやな)と一緒に居る………の?」

 

 校門から入ってきてる三谷は、足にギプスをした綾奈を支えながら歩いていた。

……何で?

 

 あたしの胸が、何故かチクリと痛んだ。

  

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