「…8時……」

 あのあと、あたしは寝ちゃってたらしい。…寝過ぎでしょ、12時間位寝てるじゃん。

まぁ……寝る子は育つって言うしね、いっか♪

 ふと携帯を見てみたら、着信もメールも結構な量だった。

しかも、1番多いのは―――三谷から。

「何なのよアイツ。…ってかお腹空いたぁ」

 とかぼやきながらメールを見ていくと、綾奈からもきてた。

『香恋ちゃん、ごめんね?

あたしの所為で三谷君と喧嘩しちゃったんでしょ?

あたし、もう大丈夫だから、

明日からはいつも通り三谷君と登校してね。

あたし、元気な香恋ちゃんが好きだから。

香恋ちゃんには、三谷君と笑い合っていて欲しいな。

あたしの所為で、ホントごめんね』

 綾奈………

三谷君と笑い合うって何だよ。あたし三谷と笑い合ってた記憶無いぞ。

とも思ったけど、あたしは『ありがとう。綾奈の所為じゃないから、そんな謝んないで』って送っておいた。

悪いのは綾奈じゃないし、謝られるとちょっと変な感じ。

とりあえず、ご飯食べに………

いや、よく考えてみよう。

【ご飯を食べに下に行く→隣には三谷が居る→嫌でも顔を見なきゃいけなくなる】

…やめた。

お腹空いてるのは我慢しよう。

「おい、高杉、起きてるか」

 あたしの部屋のドアをノックした後、三谷が言った。

…だけど、あたしは何も言わなかった。絶対、返事なんかしてやんない。ずぇぇぇ―ったい!!!

「…起きてるんだろ、高杉」

 いいから、早くどっか行ってよ、ったく…

「飯いらねーのかー」

「ご飯っ?!」

「ほーら起きてた」

「あ゙」

 あたしとしたことが。 食欲に負けた……

三谷はお盆を持って部屋に入ってきた。

「学校サボって寝てたのかよお前」

「…うるさい」

 テーブルにお盆を置くと、三谷は座った。…ここ、あたしの部屋なんだけど。

「出てってよ。何かあたしに用?」

「…ちょっと、話「聞かない」

「待てよ、用があるのかって聞いたのお前だろ、聞かないって何だよふざけんな」

「ふざけてるのは三谷だよ。あたしの事なんてほっといてって言ったでしょ!」

「…ごめん」

「へっ?」

「俺、結構お前のこと傷付けてたみたいだから」

 …い、意外すぎて何も言えない。

あの三谷が、あの、あのバカ三谷が、謝ってる…!!(←すっごく失礼)

「俺、お前のこと怒らせようとしてあんな事言ったんじゃなくて…」

「…だ、だから何よ」

「俺、思ったんだ。お前が隣にいねーと、何かしっくりこねーな、って。お前じゃねーと、何か居心地悪いっつーか…」

「綾奈に失礼だよ」

「…いや、そーゆーことでもなくて…」

「どーゆーこと?」

「だから、何つーか……お前が、隣じゃないと嫌だなって、思ったんだ」

 三谷……

「あたしは嫌だよ、三谷の隣なんて」

 三谷にそんなこと言われるとか、気持ち悪い。

あたしと三谷って、そーゆー事言わない仲でしょ。そんな謝らなくたって、あたしは

「あっそ。じゃぁ飯食わなくてもいーぞ。俺が食うから」

「は?!」

 待て待て待て待て。

まだセリフ言うには早いだろ、まだあたし途中だったでしょ、考えたら分かるでしょ?!

しかも、飯食うだぁ―――――?!!!

ふざけんなぁぁぁっ!!!あたしがお腹空かせてるの知ってるんでしょ!!!!

ダメダメダメダメ絶対ダメ!!

ご飯は食べます!何が何でもご飯は食べます!!!

「じゃ、話はそれだけだから」

 三谷はあたしのご飯を持ち去った。

「って待たんか――――っ!!あたしのご飯――――!!!!」

 あたしは急いで三谷を追って階段をおりた。

「三谷――!!あたしのご飯返せぇ―――!!!」

 あたしは勢いよくドアを開けた。

すると、三谷はいつもご飯を食べてる席で……食べてる席で……

「あたしのご飯―――――――!!!!!!」

 既に食べはじめていた。

あたしの、あたしのご飯を……!!

「吐け!吐け今すぐ吐け!!あたしのご飯!あたしのご飯返せっ!!!」

「お前いらねーんだろ、俺がありがた…いででででで痛い!いてーよお前!!放せ!放せバカ!飯食えねーだろーが!!」

「だからそれあたしのご飯だってばっ!!」

 あたしと三谷は、これで良いんだと思う。

お互いに、好きとか、そんなこと言わない。てゆーかそんな言葉必要ない。

あたしと三谷は、隣に居て、当たり前なんだしね?

これからもよろしくね、三谷。

 

 

   あとがき

 

 

「いーから放せって言ってるだろ、手を放せ!!」

「じゃぁあたしのご飯吐け!!」

「お前人が吐いた物食いてーのか!!」

「ああああああっ!!!もう、三谷のバカ!死ね―――!!!」

「だぁぁから放せ――!!!食えねーだろ!!」

「だからそれあたしのご飯―――っ!!!」

君の隣はあたしの指定席<完結>

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