「あ、大野君…」
大野君は、同じクラスの男の子。で、あたしの好きな人……。
部活が終わって、あたしは想ってること伝えようと思って探しに行った。
部活やってるかなーって思ったら、いなくて、聞いてみたら忘れ物とりに教室に行ったって言ってたから、あたしは忘れ物をとりに来たフリをして教室に入った。
「あ、高杉も忘れ物?」
「え、うん、まぁ」
「ダメだな、もっとしっかりしないと。って、俺もだけどな」
笑いながら言う大野君は、やっぱり格好良かった。
改めて好きなんだなーって思うんだけど、大野君は彼女いるしね。
よし、頑張れあたし!!
「あのさ、大野君。あたし、前から言おうと思ってたんだ」
「何を?」
「…えーっと、あたし、大野君の…」
♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪
ケータイが鳴った。…あたしの。
もー!!こんな時に誰?!
「え…」
三谷かぁーーーーーーーーーっ!!!!
「電話、出ねーの?話それからでもいいし」
「えーと、大丈夫。アイツからの電話そんなに大事じゃないし」
あたしは、電話に出ずに切ろうとした。―――ら、
「アイツって彼氏?」
「え…」
「高杉、康輔と付き合ってるんだろ?」
何で、大野君まで…
「ヤベ、もうこんな時間じゃん。今日莉子の誕生日なんだよな…話、今度でもいいか?」
「う、うん。ってゆーか忘れちゃった。そんなに大事な話じゃなかったのかも」
あたしはとりあえず笑っておいた。
ものすごく、泣きたい衝動に駆られながら。
「じゃ、また月曜日に」
大野君は教室を出て行った。
あたしは大野君が校舎を出たのを確認して、走って自転車置き場へ行った。
「あ、遅いじゃねーか高杉…って、え?!」
あたしは三谷の前に来ると、もう我慢できなくて、泣いてしまった。
泣き顔を見られたくなかったから、顔を隠すようにして下を向いて。
「…なんだよ。当たって砕けるの、そんなに嫌だったんならやめときゃ良かったのに」
「違っ…違うの…っ」
あたしは首を横に振った。
「三谷と…っ…付き合ってる…んだろ…って…言われた…っそれで、気持ちも…伝えられなくて…っ」
あたしは言葉にしたことで、余計に泣いていた。
そしたら、三谷はあたしをそっと抱き寄せた。一瞬驚いたけど、抵抗する気にもならなかった。
「三谷…?」
「泣きたいんなら、泣けよ。しばらくこーしといてやるからさ」
そのあと、あたしの頭をポンポンとたたいた。
「思いっきり泣いて、忘れりゃいいだろ」
「……三谷…っ」
あたしは、しばらく三谷に抱かれたまま、泣き続けた。