「人ってなー、心臓の音聞くと落ち着くんだとよー」
あたしの耳を自分の左胸に当てて抱きしめるから、どうしたのかと思ったら、急にこんなコトを言った。
「…え?」
「お前が泣きやまねーから」
「…ゴメン」
だって、三谷と付き合ってるのかって言われて、気持ち伝えるなんて無理じゃん。
「謝るなって。俺が、悪いんだし」
「え?」
「何か、俺が悪い気がする」
「三谷は、別に悪くないじゃん」
めずらしく、抱きしめてくれたりするしね。
「俺が頑張れって言ったから高杉は頑張ろうとしたのに、俺のせいで…っていうか」
「そんなことない。大丈夫」
もう、大野君の事なんて本当は好きじゃなかったのかもしれない。
「んー。そっか」
とくん、とくん、とくん…
規則正しく音がする三谷の心臓。……確かに、落ち着くかも。
「ありがとう」
「あ?何か言ったか、お前」
「何でもない!」
やっぱり、素直にはなれなかった。
「今日遅かったわねー」
「あぁ、俺が自主練長引いただけ」
「そうなの」
お義母さんは、あたしの顔を見た後に言った。
ヤバ…。ばれてる。あたしが泣いたの、絶対分かってるよお義母さん…。
「ご飯できてるからね」
あたしと三谷が2階にあがろうとしたらお義母さんが言った。
「はーい」
あたしはとりあえず着替えた。
「三谷…」
何で、今日は優しかったんだろう。
いつもと違うって言うか…。
やっぱり、男なんだよね。抱きしめられたとき、大きいなって思った。
何だろう。おかしくなっちゃってるよ、あたし。
「あー、ないない。何であたしが」
三谷なんか好きになるのよ。
今日はちょっと優しくしてくれただけじゃん!!
…でも、でも、でも…
「あー腹減った」
「…」
あたしが部屋を出たら三谷も丁度出てきたところだった。
「お前、風邪引いたのか?顔真っ赤だぞ?」
「えっ?!」
何で?!顔赤い??
「ハハハッ」
あたしが焦ってたのに、三谷は大笑いしだした。
「なっ…何よ?!」
「お前、ずっげー面白いし。嘘に決まってるだろ〜?バカは風邪ひかねーんだよ」
「なーーーーにをーーーーー!!!」
やっぱりコイツはムカツク!
一瞬でも好きかもとか思ったあたしがバカだったー!!
「バカは風邪ひかないから大丈夫だって言ってるんだよ、心配すんなって」
「うるさーい!!」