あたしはいつものように、土曜日の朝を迎えた。

今日は部活が休みだから、堀越の彼女の美園ちゃんと遊ぶことになってる。

なんか分かんないけど、この前の英語の辞書事件(笑)のあとから仲良くなったんだよね。

 

 と、いうわけで、いつものように下に下りると、三谷は家を出て行くところで。

「あ。お前今日部活ないよな」

「ある。先に出るつもりだったの?」

「え゙っ」

 三谷は焦ったように靴を脱ぎだした。

「まっ、待つ。待ってるから、俺。うん、待ってるぜ、俺。」

 あたしは鼻で笑うと、

「嘘。あたし、今日ないよ、部活。ってワケだから、行ってらっしゃーい」

「しばくぞ。俺の貴重な時間返せコノヤロウ」

 あたしの胸ぐらを掴んで言う三谷。

「…そんなに時間が貴重ならさっさと行けば?」

「………あ゙っ!!!」

「いってらっしゃーい」

 三谷が手をゆるめたすきにあたしはさっさと部屋に入った。

 

 

朝ご飯を食べて、自分の部屋で服を選んでたら美菜子から電話が来た。

………今日、部活なかったよね?

さっきまでの自信がなくなってきたんですけど。

………きょっ、今日、部活なかった…よね?

何の電話…?

「も、もしもし?」

『あ、おはよう香恋』

「うん、おはよう。朝からどーしたの?」

 部活あるなんて言わないでね?ないよね?今日なかったハズだよね?!?!

『どーしたのって、今日映画観にいくって言ってたじゃん』

「え?そーだっけ?」

『嘘っ?!香恋忘れてたの??』

「ごめん、あたし今日他の子と遊ぶことになってるから、また今度にしよう」

『で、でも、前売りもう買ったし…』

「うーん…じゃぁ、八幡と行ってきなよ。今度行くときはあたしが美菜子の分も買うから。ねっ?」

『………』

「美菜子?」

『……友情が恋と似てる、って、こういうことなんだろうね』

「え?」

『…ううん。何でもないよ。じゃぁ、ばいばい』

 美菜子はあたしの返事も待たずに電話を切ってた。

『ツーッ ツーッ ツーッ……』

 ………美菜子………最後なんか怒ってなかった?…ん?どっちかというと落ち込んでた?

声のトーンが下がってたんだよね、とにかく。

…あたし、なんかいけないこと言っちゃったかな。美菜子のこと、怒らせちゃった…?

どうしよう……

 

 

「あ、もしもし、美園ちゃん?」

『ん?どうしたの?』

「…あのね、今日あたし遊べないと思うんだ、今度にしてもらってもいいかな?」

『? うん、別に良いよ?』

「…ありがとう。あ……あのさ」

『ん?』

「…美園ちゃんは、恋と友情が似てるって、思ったことある?」

『えっ?!香恋ちゃん、とうとう三谷君への気持ちに気がついたの?!』

「…違う違う違う違う。変なこと言わないで。友達に言われたの」

 あたしは、詳しく美菜子との電話のことを話した。

美園ちゃんなら、分かるかなぁ?

『…その子は寂しいんじゃないのかな?』

「え?寂しい…?」

『うん。香恋ちゃん、最近その子と遊んでないんじゃない?』

「…うーん、言われてみたらそうかもしれない……」

『だからだよ、きっと。不安なんだと思うな。今日はその子と遊んでよ、香恋ちゃん。あたしはいいから』

「…ありがとう」

 

 

 寂しい…不安……美菜子が?

…美菜子も、そんなこと思ったりするのかな。

美菜子ってなんでもホイホイこなしてて、八幡という格好いい彼氏もいて。すっごく可愛いのに。

美菜子も、寂しかったり、不安になったりするの……………?

 あたしが物思いにふけっているときに、また携帯が鳴った。

”八幡 彰人”

 …何故だ。 

あたしいつ八幡の番号なんか登録したっけそして番号教えてあげたっけ?!

 ………あぁ、そういえば八幡は美菜子と一緒にいるから、知ってたらなにかと便利かなーとかいうノリで聞いたんだっけ……(実際聞いて正解だったって思ったことあったけど)

「…も、もしもし……」

 悩んだ結果、あたしは電話に出た。

『おい。お前美菜子に何した』

 あぁぁぁぁぁっっ怒ってらっしゃるぅぅどーしよぉぉぉ怖いよぉぉぉ

「えっ…えっと、あの、そのぉ……」

『ってのは冗談だ』

「へっ?」 

 さっきとは打って変わって優しい声になった八幡。…え?えぇ?どうしたの???

『めずらしく美菜子が俺の前で泣いたから、どうしたのかと思ってな。何も言ってくれないんだ』

「な…泣いた…?」

『あぁ、泣いた。俺は部活してたんだけど、美菜子がイキナリ体育館に入ってきたかと思うと俺のところまで走ってきて、見てみたら泣いてたから』

「…美菜子…」

『俺、美菜子はもう泣かせないって決めたのに、情けねーな。お前なら知ってるのかと思って電話したんだけど、知らないのか?』

「…八幡のせいじゃないよ。あたしのせいなの。あたしが泣かせちゃったの」

『…お前が?』

「今、美菜子どこ?」

『学校の体育館の隅。まだ泣いてる』

「……そっか。ありがとう。あたし、今から行く」

『おう、分かった』

 

 あたしは走って学校に行った。

今すぐ、美菜子に会いたかった。会って、ちゃんと美菜子の気持ちを知りたかった。

あたしが寂しい思いさせてるんだったら、謝りたい。

あたし、美菜子のこと大好きだから。

ごめん、美菜子。

あたしバカだから、美菜子のこと、ちゃんと考えてなかった。美菜子って強い人なんだって、勝手に決めつけてた。

…ほんとに、ごめん。

「美菜子っ!!」

「か、香恋?」

「ごめん、美菜子。あたし、美菜子のこと…っ」

「ごめんっ!!」

 あたしが言い終わる前に、美菜子が言った。

「な、何で美菜子が謝るの?あ、謝らないで?あたしが、美菜子に寂しい思いさせてたのに…」

「ううん。あたしが、一人で考えすぎてたの。最近、香恋とあんまり一緒にいられないから、寂しかったのはホントだけど」

「…ごめんね?」

「ううん、謝らないで。もういいから。香恋はあたしのこと嫌いになったりしないって、分かったから」

「…美菜子……」

 と、いうわけで、美菜子との絆が深まりました。

ってことがあった後に、何故か三谷は八幡との絆を深めようとしてます。

…見てて呆れてくるんだけど。

 

「おはよう八幡!今日も天気良いなっ!!」

「……そーだな」

「今日って体育あったっけ??」

「……なかったと思うけど」

「マジで?!俺体育楽しみにしてたんだけど!!」

「……ふーん」

 そんな二人を遠くから見てるあたしと美菜子と堀越。

「急にどうしたのかな、康輔」

「ほっといてあげて。バカだから」

「あきと仲良くなろうと思ったら相当時間かかると思うけどなーっ」

「試合もうすぐなんだけど……」

「ほっといてあげて。バカだから」

 まったく、ホントわけ分かんないな、三谷は。

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