「ねぇ。二人乗り、やっちゃダメらしいね」
「そーらしいな」
「どうする?」
「……は?」
という会話をしているにもかかわらず、今日も2ケツで帰ってきたあたしと三谷。
そろそろやめないと、お巡りさんに見つかったら罰金とかさせられるよね。
いや、見つかる見つからないが問題じゃなくて、危ないもんね、二人乗り。
交通ルールに違反してるんだもんね。ダメだよね。
「だから、どうするのって言ってるんだけど」
「…何をだよ」
「どっちが自転車に乗って行くかに決まってるでしょ!」
「は?そんなの俺に決まってるだろ!!」
「何ふざけたこと言ってんの?」
「ふざけたこと言ってんのはお前だろーが。アレは俺の所持物だ」
「そんなの関係ないでしょ」
「…いや、あるだろ」
「ないって」
「あるって」
「ないって言ってるじゃん」
「俺はあるって言ってるんだけど」
「……なかなか譲ってくれないわね」
「譲るわけないだろ。バカかお前は」
あたしは舌打ちした。
「つーかそんなに自転車に乗りたいんなら買ってもらえばいいじゃねーか。即問題解決だろ!」
「そんな贅沢なお願いできると思ってんの?!登下校には使えないけど、自転車持ってるんだからねあたし!」
「…お父も兄貴も働いてるのに、金の心配することないだろ。義姉さんもたまにパート行ってるしさ」
「いちいちうるさいですよ三谷君」
「………」
勝った!
と思ったのもつかの間。
三谷もなかなか譲る気がないらしい。
「俺のほうが朝早く出るし、どう考えても俺に必要だろ、あの自転車は」
「あの自転車はあんたを必要としてないかもよ」
「知るかよ」
「というわけで、自転車の意見も聞いてみよーう♪」
「俺の言ったことは無視かよお前」
「絶対自転車はあたしに使って欲しいと思ってるって!あたし聞いたもん!!」
「誰にだよ。つーか話聞けっつってんだろ」
ここであたしは咳払い。
「ったく、お前の頭ん中どーなってんだよ」
「あ」
「また変な事言うんじゃねーだろーな」
「いっそのこと、処分しちゃえば?」
「何つーこと言ってんだテメーは!!!自分のじゃないからってそういう発言するか普通!!!」
三谷の発言はオール無視で言ったあたしの言葉に、三谷の声も大きくなってた。
「じゃぁ何。三谷はあたしが普通の人と同じ発想をするとでも思ってたの?」
「いや………って、話そらすんじゃねーよ」
「はーっ」
あたしが溜め息をつくと、三谷も短く溜め息をついた。
「ホント、どーすっかねー」
「お前が言うな」
次の日。
「いっちに! いっちに!ほら、三谷!!もっとペースあげて!!」
「うっせーよ。黙ってろ。誰が自転車に乗せてやってると思ってんだお前は」
「うるさい。黙れ。誰が鞄運んでやってると思ってんだお前は」
「じゃあ代われよ!!俺乗るから、お前走れ!!!」
「何言ってんのよ!あたしは野球部の期待の星三谷君の足腰を鍛えてあげようと思って自転車に乗ってるのに!!」
「嘘つくんじゃねーよ!!!」
自転車に乗ったあたしと、ユニフォームを着て走る三谷が朝早く登校してましたとさ。