「もうすぐクリスマスだねー」

「うん」

「香恋は、どうするの?」

「何が?」

「クリスマス」

「どうするって言われてもなぁ…」

「三谷と過ごすの?」

「………」

 よく考えてみれば、そうなりそうな気がする。

…せっかくのクリスマスが、聖なるクリスマスが、三谷の所為で…!!!!

「み、美菜子は?」

 ここはとりあえずさっきの話は聞かなかったことに。

「あたしはモチロン彰と過ごすよっ」

 あぁ、幸せそうな笑顔。

キラキラしてるよ美菜子。美菜子が光り輝いてるよ……

「いーなぁ、美菜子は」

「彼氏がいるから?」

「うーん、それもあるけど…」

「香恋には三谷がいるじゃん♪」

「………」

 さっきの発言も聞かなかったことに………

 

 

 クリスマスかぁ。

そうだ、優大にプレゼント買ってあげよう!!

何が良いかな、優大のプレゼント。服?おもちゃ?優大って何が好きだっけなぁ〜

とか思いながら、あたしは貯金箱の中身を出した。

 

…。

 

…………。

 

………………………え?

……ん?何故?

何で340円しか無いの――――っ?!!!

 

嘘だ!!

あたし今月そんなに遊んでないし、お金が減るわけないし、だってだって……

………いや、確か美菜子と遊んだような気がする。

服買っちゃったっけ… ケーキも食べたなぁ… あと、あと…

うあぁぁぁっ!!最悪だぁ!!340円で何が買えるのよ?!

考えろ、考えるんだあたし。

きっと340円でも何か買えるはずだ。考えろー、考えてみろー

 

………。

 

無い。

無いよそんなの。

340円でクリスマスプレゼント買おうなんて無理があるよ。

お金、お金………

三谷に借りるか。

 

 あたしが部屋を出て、

「三谷ー」

 って言ったのと、三谷が部屋を出て、

「高杉ー」

 って言ったのはほぼ同時だった。

「…」

「………」

「「お金貸して」」

 うわぁぁぁっ!!!!

三谷とハモっちゃった上に内容同じかよ!!!

「三谷も、お金無いの…?」

「無い」

「…最悪」

「413円しかない」

「…413円…」

 微妙な金額だけど、あたしの持ってるお金と合わせたら753円…

「三谷」

「何だよ。金無いって言ったろ」

「753円なら、何か買えると思う?」

「………そーだなぁ…」

 

 

 

 

「三谷、コレは?!」

「…微妙」

「そうかなぁ。イイと思ったんだけど」

「俺は思わない」

「何よ、700円だし、いいじゃん」

「俺は嫌だ」

「…死ね」

「…いいか、俺とお前で金を出し合って買うんだぞ」

「うん」

「お前だけ気に入ったってダメなんだ」

「そんなことぐらい分かってるもん」

「他のを探せ。コレは絶対嫌だ」

「…」

 三谷はあたしが選んだクッションを元の位置に戻した。

 

 …はい、結局お金がないから、二人で出し合って優大のクリスマスプレゼントを買うことになりました。

三谷と出かけるのは嫌だけど。

しかも、赤ちゃん用の物を取り扱ってるお店に行くから、今までより視線が…

カップルじゃないですよ。子供出来たりしてませんよ。そんな目で見ないでください。

「高杉、コレは?」

「嫌ー」

「………」

「何」

「こんな調子じゃ決まらねーぞ」

「そもそも三谷と一緒に買うって所からダメなんだよ。誰がこんなこと言い出したのよ、もーっ」

「いや、お前だろ」

「……とにかく、こうなったら第三者に決めて貰うしかないね」

「…なんかまともなこと入ってる気がしないでもないけど、ムカツクなぁお前」

「店員さんに選んで貰おう」

「…は?」

 

 結局、店員さんに選んで貰った。

三谷は文句ブツブツ言ってたけどね。

買った物に対してじゃなくて…

 

「あら、若いご夫婦ですねぇ」

 何て言い始めた店員さん。

「すみません、まだ高校生です。夫婦とかじゃなくて…」

「式はいつ挙げたんですか?」

 言っても聞いてない店員さん。

「そうですか〜」

 いや、何も言ってないんですが…

「お子さんはいつお生まれになったんですか?」

「いえ、生んでません。ってか夫婦じゃないです」

「あぁ、じゃぁまだ1歳にもなってないんですねぇ」

 言っても聞いてない店員さん。

「男の子ですか?」

「あぁ、はい…」

「じゃぁ、コレなんかどうですか?730円ですし」

「はい、それでいいです」

 もうどうでもよくなって来ちゃった。

三谷は話しすら聞いてないし。

「お幸せに〜」

 いや、あの……

もう言い返す気もありません。

 

「あの店員思いこみ激しいぞ」

「あたしに言わないでよ」

「………」

「でも、選んで貰って正解だったでしょ?」

「ん?…まぁ」

「優大喜んでくれるかなぁ」

「お前が買ったからって理由で気に入らねーかもな」

「…何ソレ」

「思ったことそのまんま言っただけ」

 くっそーっ、ムカツクなぁコイツは。

何でいっつも一言余計なこと言うかなぁ?性格直せよ!

「あ、雪」

 三谷がぽつと言った。

「え、雪?!」

 あたしは上を見上げた。

雪が、ちらちらと舞い始めていた。

「初雪だぁ」

「そーだな」

「きれーっ」

 初雪かぁ…

「綺麗だねっ、三谷っ!!」

「…寒っ」

 ………。

何でいっつも一言余計なんだ三谷は。…死ねばいいのに。

 

 そんなこんなで、結局クリスマスも三谷と過ごしましたとさ。

モドル あとがき

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