『ホントに行くの?』

「うん。今さら断わったら、舞香(まいか)に悪いでしょ?」

 多分、電話の向こうで美菜子は溜め息をついたと思う。

さっきの聞き方から、もう呆れてるの丸わかり。

『そうだけど…… 香恋、無防備なんだから、気をつけてね?あたしそれが心配で…』

「大丈夫!そんなに心配しないでよ」

 お姉ちゃんと同じコト言うなー あたしって無防備なの?

『そーぉ?』

「大丈夫だってば。 じゃ、ソロソロ時間だし、電話きるね」

『うん…じゃぁ、また明日』

「うん、バイバイ」

 あたしは電話をきると、階段を下りた。

「香恋ちゃん、もう行くの?」

「はい、行ってきまーすっ」

 優大が手を振ってくれてたから、あたしは振り返した。

最近、ハイハイができるようになって、座ってるときには手を振ったりもしてくれるようになったんだ、優大。

すごーく可愛いの!!

「高杉」

「…三谷?」

「言っとくけど、」

「早く帰ってこい。 でしょ?」

「…分かってんなら、別にいいけど」

「大丈夫。ちゃんと早めに帰るから。 わざわざ三谷なんかと帰りたくないし」

「…その口なんとかなんねーのか? お前文句しか言えねーのかよ」

「うっさいわねー 早く帰るって言ってるんだから、三谷は寝てれば?」

「まだ晩飯食ってねーんだよ」

「じゃぁ早く食べなよ」

「…つーかお前、何その服」

「服?」

「変な格好してんじゃねーよ」

 視線をそらして言うと、三谷は家へ入った。

……変な格好で悪かったわね―――!!

 

「舞香…」

 舞香とは、誘ってきた女の子。

同じクラスで、部活もバレーで一緒だから、割と仲が良いんだ。

まぁ、美菜子程じゃないけど…

「どーしたの?」

「あたしの服、変?」

「ううん、全然」

「可愛いじゃん」

「香恋にはそーゆー服が似合ってると思うよ?」

 舞香以外の子も答えてくれた。

「ホント?!」

「うん。 …どーしたの?」

「あ、ううん。ちょっと心配だっただけ」

 あたしは笑って誤魔化しておいた。

 …何、気にしてるんだろう。

三谷に変って言われたのは、アイツがただあたしのことバカにしたかったからでしょ?!

……でも、何か嫌なんだよね。 

どうしてだろう…? 三谷に“変な格好”って言われたのが、すごく、悲しかった………

 

 

「………高杉 香恋です」

 あたしの自己紹介は、名前を言うだけで終わった。

あんまり、楽しくない…

三谷に変な格好って言われたの、気にしすぎだよあたし……

何で、だろう…

「香恋ちゃん?」

「ひ?!」

 話しかけてきた男の子はあたしの反応を見て笑った。

 その後も、やたらあたしにばっかり話しかけてきて……

ハッキリ言うと、うざい…

でも、顔も悪くないし、性格なんか三谷と比べものにならないぐらいに…!!

 って、何であたし三谷と比べてるのよ…っ

忘れよう!!あんなバカのことは忘れれば良いんだっ!!

  

 

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