「優大が熱?!」

「香恋落ち着いて?大声出さなくてもいいでしょ」

「…あ、うん」

 

 土曜日。

今日はめずらしく部活が午前中だけだった。

しかも、野球部はオフの日らしくて、家に帰ると三谷がいるから、あたしは美菜子達と遊んで帰る予定だった。

 でも、お姉ちゃんから来たメールを見て、遊ばずに帰ることにした。

だって…だって、優大が熱出したんだよ?!

 

「康輔君がみてくれてるから、香恋はいったん着替えてきなよ」

「…はーい」

 あたしは急いで2階へ行って、着替えてきた。

「ただいま」

「あ、お帰り啓介」

「お帰りなさーい」

 お義兄さんが帰ってきたから、あたしは一言だけいうと、優大がいる部屋に行った。

 

「優大、大丈夫?!」

「静かにしとけバカ。優大起きるだろ」

「あ……ごめん」

 何であたしが三谷なんかに謝らなきゃダメなのー?!

なんか無性に腹が立つっ!!ムカツク!!

「そーいや兄貴、帰ってきたのか?」

「え?あ、さっき帰ってきてたよ」

「早退でもしてきたのかな」

「そうなんじゃないの?てかもともと今日はお姉ちゃんと映画いく予定だったんでしょ?お義兄さん」

「あぁ、そーだっけ」

「でも優大が熱出しちゃったんだもんねー」

「病院行かねーとな」

「そっか」

「康輔君、香恋、お昼食べましょ?」

「はーい」

 

 

 

「お姉ちゃん、優大どうするの?」

「…どうするって、別にどうもしないけど?病院連れて行くだけよ?」

「バカだろお前」

 横で三谷が小声で言った。

「うっさいなぁ」

 聞こえてるんだからね。

「そーだ。今日啓介と映画行けなくなっちゃったし、康輔君と香恋行ってきなよ」

「「は?!」」

「香恋ちゃんも見たいって言ってた映画だし、いいと思うけど」

 お義兄さんまで何言い出すの?!

「行ってきなよ。どーせ予定ないんでしょ、香恋」

「それは三谷だって一緒でしょ!?」

 何であたしにだけ言うの!!

「俺はお前とは違う。同類にするな」

「何をーっ」

「康輔君も、暇でしょ?」

 お姉ちゃんが言った。

「…いや、俺は勉強でもしようかなーと」

「嘘付け」

「だまれ」

「映画見たって勉強する時間ぐらいあるじゃない」

「そうよ、たまにはいいじゃない。二人で出かけると困ることでもあるの?」

 お義母さん…っ

困ります!!三谷と出かけると困ることありまくりです!!

三谷と一緒にいるところ学校の誰かに見られたら、更に噂がぁぁぁっ だから、絶対嫌なんですっ!!!

「行くの、行かないの?」

 お姉ちゃんの笑顔がすごく不気味に見えた。 何て言うか、怖い。

そんな顔で言われたらあたしも三谷も断れるはずなくて………

「行ってらっしゃい」

「じゃぁ、帰りは二人で帰ってね?」

「「はい…」」

 映画館まで、優大を病院に連れて行くお義兄さんの車に乗せて貰った。

「何でお前なんかと映画…」

「文句あるなら外で待ってれば!!」

「俺だってこの映画見たかったんだよ!!だから見る!!」

「あー でも隣にだけは座りたくない」

「俺も」

「…よし、終わったらここ集合ね」

「分かった」

 何故こんな展開に……

あの時あのまま美菜子達と遊べば良かった、って今全力で後悔してます。

  

inserted by FC2 system